後継者に自社株を移転したいが、株価が高くてすぐに渡せないという事例
(1)背景
ご相談にきたオーナー社長の会社は、経営が順調で年々成長しています。そろそろ高齢になってきたこともあり、後継者である息子に承継を考えています。
しかし、現在は会社の株価が高く、現時点で息子に株式を渡すと多額の税金がかかってしまいます。
株価を引き下げる施策も時間がかかりそうです。この状態で、自分が認知症になってしまったら、判断能力が失われ、会社の経営が止まってしまうため、対策を考えています。何かよい方法はありませんか?
(2)課題
認知症患者は、判断能力が低下しており、ご自身で契約の締結が出来ません。勿論、議決権の行使もできなくなります。
会社の株を全て社長が持っていた場合には、議決権を行使できるのは社長だけです。
このケースで、社長が認知症になった場合、以下の課題が出てきます・株主総会決議ができない・決議ができないため、会社経営がデッドロックになるそれでは、このような状況を防ぐためにはどのような解決策があるのでしょう?
(3)解決策
自社株式を以下の内容で信託契約を設定します。
委託者:オーナー社長受託者:後継者(息子)受益者:オーナー社長
(4)効果
上記の内容で信託契約を設定することで、現段階での自社株式の移転の際の贈与税を発生させずに、長男に株式を引き継ぐことが出来ます。
信託をすることで、自社株の「議決権を行使する権利」と「株の配当を受け取る権利」を切り分けてしまい、その中の「議決権を行使する権利」を後継者である息子に移すのです。
このようにすることで、社長が認知症になっても、後継者が議決権を行使するため、株主総会の決議ができ、会社経営のデッドロックを防ぐことができます。
また、株の配当を受け取り権利は、依然としてオーナー社長にあるため、この段階では贈与税等はかかりません。
ただし、家族信託は社長が認知症になる前にしか契約できないため、早めの対策が必要となります。